嫉妬深い器
嫉妬深い器たち
程よいサイズでボウル形
際だって特徴はないけれど何かと便利な普通の鉢だった私
そんな私にあなたがある日の夜、
お花みたいなかわいい植物を植えてくれました。
やがて夜が明け朝日を浴び繊細な陰影と綺麗な色彩を見せるこの子を
色の無い私はとても美しく感じ凄いプレゼントを貰ったようで
嬉しくて嬉しくて 信じられない気持ちでいっぱいでした。
それから毎日、毎日、
少しずつ成長していくこの子見るのが本当に楽しみで愛おしく大事に思い
とくに何をしたというわけでもないのですが、
一生懸命、守って育てていきました。
あなたも毎日覗きに来て、時々葉に触れて微笑んだりしていましたね。
私もそれを見ると嬉しく、少し誇らしく、
何だか特別な器になった気がしていました。
このままずっと楽しい時間が続けばよかったのですが、
でも、なんとなく分かってしまったのです。
あなたがいつも見ているのは私ではなくこの子だけと言う事が。
あなたの視線はいつも私の数センチ上に注がれ続けている事に、
最初は「私は只の器だし別に普通の事、出来るだけ気にしないように!」と努めました。
しかし、蒔かれた嫉妬の種はあなたの微笑と眼差しを養分に育つ事をやめませんでした。
この子ばかり見ないで欲しい、、、
さわらないで欲しい、、、
もし、、、あなたがふと思いつきでこの子を別の器に植替えでもしたら、、、
私はもう本当に見向きされないのだろう、、、
そしてかわいいこの子を見る事も包む事もできずに
そこからの永い年月を私はどう過ごしていけばいいのだろう、、、
そんな事ばかり考えていたせいなのでしょうか?
私に少しずつ変化がおきてきたのです。 器のふちが隆起してきました。
それは徐々に棘となり 少しずつ、少しずつ、この子を包み込んでいきました。